- 無尽会(むじんかい)って飲食店とかに書いてあるけど何?
- 無尽てどんなシステムなの?
- 無尽って山梨だけの文化?
本ページは山梨県在住のライターが、山梨のローカル文化「無尽(むじん)」について、ルールから歴史までまとめて紹介いたします。
山梨県民であればぜひ知ってほしい、他の都道府県にはない文化ですので是非最後までご覧ください!
山梨県民にお馴染みの無尽(むじん)とは?
無尽(むじん)とは、月1回程度特定のメンバーで集まって飲み会や食事会を開き、食事代とは別にお金を徴収して積み立てる山梨県独特の文化のことです。
積み立てたお金は参加メンバーが順番に受け取り、自由に使うことができます。受け取ったお金は貯金をしたり、自分のほしいものを買ったりすることができます。
年に数回、特別なボーナスをもらえるような感覚のイベントとなっています。
▼無尽の積み立てイメージ▼
近年では積み立てなどの金銭的なやりとりをせず、定期的に集まって飲み会を開くことも無尽(むじん)と呼ばれています。
女性同士の無尽はいわゆる女子会と同じようなものですが、家庭を持つ女性も「無尽に出かける」と言えば夫や子どもが快く送り出してくれます。
無尽がいかに山梨県民に大切にされているのかわかりますね!
会社などでも「今日は無尽なので」と言えば残業を免除されるところもあります!
無尽(むじん)のルールを学ぼう!
無尽にはいくつかのルールが存在します。グループごとに内容は若干異なりますが、大きなルールは以下の通りです。
- 複数の無尽に参加OK
- 積み立て金額は自由に設定できる
- 無尽は全員に行きわたるまで行う
- 無尽のお金の使い道は自由
- 最後に受け取る人が一番得する
無尽(むじん)は複数参加OK
山梨県民が参加する無尽(むじん)の数は、1人あたり1〜3つといわれています。
- 学生時代からの友人
- 職場の同僚
- 趣味の仲間
など、気の合う人同士で開催されます。
※性別や年代を問わず、さまざまな人たちが交流している趣味関係の無尽も存在します。
幹事は持ち回りで居酒屋や飲食店の予約や人数の管理を行いますが、飲み会だけでなくキャンプなどのアウトドアに出かける場合もあります。
無尽の積み立て金額は自由に設定できる
無尽で積み立てる金額は各グループごとに異なります。
一般的には1万円から3万円が多いようですが、学生や20代などのうちは3,000円、5,000円などの少額の無尽会もあります。
無尽は全員に行き渡るまで行う
無尽はその日集まったお金をメンバーの1人が全額受け取り持ち帰りますが、それを全員に行き渡るまで無尽をするのがルールです。
無尽でお金を受け取ったにも関わらず、次回以降参加しないと信頼関係が大きく崩れます。
無尽は信用できる友達とやることをおすすめします
無尽のお金の使い道は自由
無尽で受け取ったお金の使い道は自由です。受け取った人はどのように使っても構いません。
メモ
旅行や忘年会の費用にするなど、目標金額とお金の使い道を決めて積み立てを行うグループもあります。
毎回、食事代に少しプラスする程度の負担なので、おのおので貯金するよりも気軽に、着実にお金を貯めることができます。
最後の順番の人が一番得をする
無尽で一番得するのは実は一番最後に受け取る人です。
毎回1人がお金をもらえるということは、
- 早く受け取ることができる人
- 最後まで待たなければならない人
が発生するということになります。
無尽本来のルールでは早い順番で受け取りたい人が会費+αして積み立てなければなりません。
※+αの相場は1,000円です。
わかりにくいので図で表すと下記の通りとなります。
上図は4人で毎月1万円ずつ積み立てる無尽の例です。
- 最優先で受け取りたい人は最初から11,000円積み立てる
- 2番目に受け取りたい人は2回目から11,000円積み立てる
- 3番目に受け取りたい人は3回目から11,000円積み立てる
結果として一番最後に順番が回ってくる人が一番得するようになっています。
10人以上の無尽会だと小さな積み立ても大きな収入になります。
無尽(むじん)の歴史を簡単に紹介
無尽の歴史は鎌倉時代にまで遡ります。
当時は助け合いの精神を元に、まとまったお金が必要になった際、お互いに援助し合う庶民同士の融資制度として運用されていました。(これが無尽の始まりとされています。)
災害や病気による困窮者の救済などが主ですが、ほかにも寺院の設立や建て替え、公共事業といった事業振興を支援する現代のクラウドファンディングのような役割もありました。
そのほかにも、
- 冠婚葬祭などの急な出費
- 病気で働けなくなったときや家畜が死んでしまったときの保険
など、無尽は現代の銀行、保険会社、証券会社を包括した役割を果たしていました。
山梨県に無尽が残っている理由
親戚、友人知人、地域の人たちが寄り集まってお金や物を出し合うという相互扶助の精神から始まった無尽は、共同社会を維持するために大きな役割を背負っていました。
村単位での生活を大切にしていた当時の人々の中でも特に山梨県では住民同士のつながりが強く、それが山梨県で現代にいたるまで無尽という文化が受け継がれた理由といえます。
この融資制度は江戸時代まで発展し、明治に入ると営利目的での無尽が増えて業法化されます。
その後は今でいう銀行や保険のシステムが確立し徐々に無尽という文化が薄れていきますが、現在もなお無尽業法という法律に基づいて経営され続けている法人が一社のみ存在しています。
個人間の融資制度はなくなったものの、仲間で集まり助け合うという形が発展して残ったのが無尽という文化といえます!
無尽は東日本では「無尽講(むじんこう)」、西日本では「頼母子講(たのもしこう)」、沖縄県などで「模合(もあい)」とも呼ばれています。
【補足】山梨県民に無尽(むじん)は憩いの場
山梨県の飲食店は、看板やホームページなどの至るところで「無尽承ります」とアピールする広告を出しています。
「毎月第3土曜日にこの店で」などと、無尽は決まった日時と店で開かれるケースが多いため、居酒屋などの飲食店にとっては無尽の開催場所として利用してもらうことができれば、一気に常連を大人数獲得するチャンスになるのです。
高齢者にとっては無尽は大切な場
無尽は単なる飲み会・食事会の場にとどまらず、高齢社会となった現代の日本に有用な場としても機能しています。
山梨県内の交通の便が悪い地域では、高齢者が無尽を開いて集まるタイミングに保健師が訪れて健康相談を受けつけたり、血圧を測ったりしているところもあります。
「無尽に参加していろんな人と話したり思い出話をすることで認知症予防になっている」と話す高齢者も多く、無尽はコミュニケーションの場としてはもちろん、健康管理を意識する場にもなっており、山梨県民の健康寿命を延ばす一助となっているのではないでしょうか。
【アンケート調査】近年は参加する人が少ない?
山梨県に住んでいても無尽に参加したことある方が少なくなっています。
当サイトで「無尽に参加したことがあるか?」アンケートを実施したところ、下記のような結果となりました。
山梨県民であればほとんどの方は知っている無尽(むじん)も、実際に参加したことある人は20%
さらに詳しく見たい方は下記の記事をご覧ください。
参考山梨県民は無尽(むじん)をどう思っている?30名に聞いてみた
無尽(むじん)は山梨県民にはなじみ深いローカルルールです。 【山梨県の風習】無尽(むじん)とは?ルールから歴史まで徹底解説でも紹介していますが、山梨県で無尽はコミュニティの場であり、飲みに行く最強の理 ...
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まとめ
- 無尽は山梨県のローカルルール
- 無尽は集まったものでお金を積み立てて順番に受け取るもの
- 無尽は1人1~3つ参加している
- 無尽は鎌倉時代から始まった
- 山梨県では集まりのきっかけで大切なコミュニティの場
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