地産地消という言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
地産地消は地域の活性化に繋がったり、近年問題になっている生産地偽装や環境問題を解決するため非常に有効な取り組みで、地産地消に取り組もうとする事業者様も増えてきています。
本ページでは地産地消という言葉を図を用いながら詳しくご紹介しつつ、農林水産省で毎年開催している地産地消優良活動表彰事例をご紹介いたします。
新たな取り組みの参考になれば幸いです。
この記事でわかること
- 地産地消の意味と目的がわかる
- 地産地消の代表的な取り組みがわかる
- 地産地消のメリット・デメリット
- 地産地消の詳細な取り組みがわかる
地産地消の意味と目的とは
地産地消は、地域生産・地域消費の略で「地元で生産された農作物や水産品などを地元で消費すること」を意味します。
地産地消の対象となるものは野菜・肉・魚などの農産物や水産物メインとなり、地方の郷土料理を含む場合もあります。
地産地消の主な目的は、
- 地域生産物の消費拡大
- 食の安全な取引
- 食文化の理解
- 地域活性化
- 生産者と消費者の繋がりを作る
など、多くの役割が期待され、各都道府県や農業協同組合が力を入れて取り組んでいます。
産地偽装問題や食への安全が注目されている近年は、特に地産地消への取り組みが重要視されています。
地産地消は地元生産物の消費だけに目が行きがちですが、生産農家と地域(消費者)の繋がりを作ることのも目的とされています。
図で見る地産地消
一般的な流通
地産地消
生産者の作った野菜や果物は、通常、流通業者を介して、全国各地また海外に届けられますが、地産地消の場合は、直売所や地元レストランに直接提供することでその地域で消費されます。
メモ
地産地消は30年以上前(1980年代)から農業関係者の間では日常的に使用されていたとされています。
【地産地消】取り組みの代表例は「直売所」「学校給食」
地産地消の一番身近でわかりやすい例が直売所・朝市や学校給食です。
直売所では地元農家が生産した野菜や果物を直接購入することができ、購入する方は周辺に住んでいる消費者の方がほとんどです。
直売所で購入した経験のある方はご存じかと思いますが、直売所で販売されている野菜や果物には生産者の名前や顔写真が記載されていることもあり、消費者側としても安心して購入することができます。
また学校給食でも地元の生産物が使われていることが多く、私たちが知らないところでも地産地消の取り組みがされているケースも珍しくありません。
その他の取り組みには、
- 地元の介護施設
- 地元のレストラン
- 量販店での直接販売
- ほか
といったものもあります。
【参考】地産地消の分類
農林水産省では地産地消を下記のように分類しています。
混同されやすい「自給自足」
地産地消は自給自足と混同されがちですが、内容はやや異なります。
地産地消 | 生産された地元で消費される |
自給自足 | 自分で作って自分で消費する |
地産地消のメリット
地産地消は生産者・消費者、また環境面にそれぞれに多くのメリットをもたらします。
生産者のメリット
- 新鮮な野菜を買ってもらうことができる
- 規格外野菜などでも販売することで廃棄ロスが減る
- 消費者と交流することでニーズがわかる
特に一般流通が難しい規格外野菜を直接販売できることで、収益の向上につながる点は生産者にとっては大きなメリットです。
消費者のメリット
- 安全・安心の野菜を購入できる
- 流通コストが上乗せされていない金額で購入できる
- 生産者と交流ができる
- 地元の地域の食文化を知ることができる
普段何気なく購入している野菜や果物や水産品には輸送コストが上乗せされています。地産地消の場合は地域消費のため輸送コストがほとんどかからないため安価で購入することができます。
また食への安全が重視されている近年では、生産者の顔が見れる地産地消の中は、消費する側も安心して購入することができます。
環境保全のメリット
- 地域の活性化に繋がる
- 新鮮な野菜で食の安全に繋がる
- 流通コストが削減される
- 食料自給率があがる
食の流通にはフードマイレージという考え方があります。
簡単に要約すると、
生産地から消費者(食卓)までの距離が短ければ短いほど環境への負担が少ない。
といった考え方です。
※輸送には電車・トラック・飛行機・貨物船などが用いられ、その距離が長ければ長いほどCO2が排出される環境への負荷がかかる
地産地消は生産者・消費者だけでのメリットではなく、環境問題の観点から見ても非常にメリットのある取り組みと言えます。
地産地消のデメリットや問題点
地産地消は、大規模流通のようにシステムが確立されていないため、梱包・出荷などの作業は生産者負担となり、その分の労働力確保が必要になってきます。
地産地消は流通コストを下げることで安価に提供できる場合も多いですが、生産者の負担が増えるとコストアップにつながってしまうケースも少なくありません。
また地産地消といえどもPR活動や営業活動を行わなければ、地域の人に認知してもらうことが難しいです。営業・PR人員の確保も地産地消に取り組む生産者にとっては大きなデメリットとなりえるでしょう。
地産地消ですべてまかなうことはできない。
地産地消では供給できる生産物に限界があるため、結局のところ大きな流通にはなりえないことも問題点と言えます。
こうしたデメリットや問題点を意識しながら、地産地消に取り組んでいく必要があるでしょう。
地産地消の面白い取り組み事例(一部)
農林水産省では毎年、地産地消優良活動表彰事例の公表しています。
今回は平成30年に受賞した事例のなかから4つピックアップしてご紹介いたします。
カタシモワインフード株式会社
大阪の特産品『デラウェア』はワインには合わないと言われていたが、研究して大ヒット商品『たこシャン』を開発。
また、大阪都市のぶどう畑の残る景観を守るために、高齢のぶどう農業者から畑を借り受け、ボランティア農園として都市住民や企業との連携を図る取組みを推進。
その他イベントを多数実施し、大阪ぶどう・ワインの PR へと繋げている。
都道府県 | 大阪府 |
受賞年度 | 平成30年度 |
受賞内容 | 農林水産大臣賞 生産部門 |
和歌山県立神島高等学校
地域の特産品である「梅」の消費拡大に協力できるように商品開発プロジェクト「神島屋」を展開。
地域的に梅に関わった「梅」の味に親しんでもらえるような商品を開発し、様々な高校生が参加するコンテスト等にも積極的に参加するなど、梅の消費拡大・地域の活性化に結びつくような活動を取り組んでいる。
都道府県 | 和歌山県 |
受賞年度 | 平成30年度 |
受賞内容 | 文部科学大臣賞 教育関係部門 |
協同組合 青森県黒にんにく協会
「青森の黒にんにく」として地域団体商標を取得し、世界黒にんにくサミットの開催等による黒にんにくのブランド化に取り組み、業界をリード。
地域内で生産すること、かつ、調理せずそのまま食べられる商品を提供することと消費の拡大を狙ったマーケティングにより素材供給県から脱却し、農家の所得向上に大きく貢献。
都道府県 | 和歌山県 |
受賞年度 | 平成30年度 |
受賞内容 | 文部科学大臣賞 教育関係部門 |
有限会社岩谷水産
和歌山県の特産物である「梅」を配合させた飼料を活用した「紀州梅まだい」というブランド魚を開発。
全国及び海外の展示会に参加し、商品の PR 活動とともに、和歌山県の情報発信。また、県内のゼミで講演するなど、地元地域や県内の学生に向けて「紀州梅まだい」の取り組みを生産者自らが発信することによって、地場産業繋いでいる。
都道府県 | 和歌山県 |
受賞年度 | 平成30年度 |
受賞内容 | 全国地産地消推進協議会会長賞 生産部門 |
地産地消優良活動表彰事例ではほかにもたくさんの地産地消の取り組み事例が公開されています。興味のある方は是非ご覧ください。
エネルギーの地産地消も活発化
近年ではエネルギーの地産地消の取り組みも各自治体で増えてきています。
エネルギーの地産地消とは、新電力や再生可能エネルギーをその地域で生産し消費しようという考え方です。
大きなメリットとしては、
- エネルギー供給の安定化
- 地域経済の活性化
が挙げられ、今後さらに注目されるでしょう。
▼エネルギーの地産地消を詳しく知ってイマを知ろう▼
参考エネルギーの地産地消とは?メリット・デメリットや具体事例まで解説
エネルギーの地産地消という言葉を聞いて、どのようなイメージを持ちますか。 地域で創ったエネルギーを地域で使うことだと意味は分かっても、どのような取り組みなのか具体的にイメージしにくい言葉ではないでしょ ...
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まとめ
- 地産地消は地元生産・地元消費の略
- 地産地消の目的は「地域生産の消費拡大」「地域活性化」「生産者の消費者の繋がり」
- 輸送コストが下がるため環境保全にも有効
- デメリットは大規模流通に向いていない
- 各自治体や団体が様々な取り組みをしている